インカム

昨日は日曜という事でお店は休み。
今回は書くタイミングを失っていた入社してすぐの頃の話。

出社してすぐに『今日はこっちに入って』とオーナーに言われる。
週末という事でポワンには予約が入っているようだ。

『インカム着けて』

インカム？

確かにその日はオーナー、Aさん、Kくんの全員が耳にインカムを着けていた。

使っている所を見た事はあるが、自分で着けた事はない。
まあ、トランシーバーみたいなもんだろう。

とりあえず着けてみる。
うーん、かちゃましい。（邪魔くさい）

Aさんに一通り説明を受けるがいまいちピンと来ない。

トランシーバーと違いボタンを押さなくても聞こえるらしい。
確実に聞かせたい時はボタンを押すそうだ。

まあ、使ってればわかるだろう。

オーナーからの指示が聞こえてきた。

おー！聞こえる、聞こえる。

しかし左耳からインカムの音、右耳から生の音が聞こえるという状態は、どうも好きになれない。

その後、しばらくインカムから音が流れない状態が続いた。

あまりにも聞こえてこないので『壊れてんじゃねえのか？』と不安に思ったが、Aさん、Kくんは料理を作っているんだから、オーナーが言わない限りインカムから声が聞こえる事はメッタにないのだろう。

とりあえず私の仕事も忙しくなってきたので、インカムの事は忘れ集中していった。

入社してすぐの頃なので、ドリンク一つ作るのにもレシピを確認。
材料を捜すのにも一苦労。
自分で言うのもなんだが、とにかく要領が悪いのである。

冷蔵庫を開けてジュースを取り出すのだが、一緒に使うライムを出すためにまた冷蔵庫を開けたりする。
複数のドリンクを作る場合などはもっとひどい。
『何回冷蔵庫を開けるんだよ！』ってくらい要領が悪い。

まあ新人なんだから仕方ないのだが、少しずつ覚えていかなくては。

しばらく集中していたが何度目かのドリンクで同じ失敗をしてしまった。
またもや冷蔵庫を開けたのにライムを出し忘れたのである。

「もおっ！！」

冷蔵庫からライムを取り出して立ち上がると、AさんもKくんも固まったままこちらを見ている。

あっ！インカム着けてるの忘れてた！！

「もしかしたら聞こえてた？」

Aさん、Kくん共に笑ったままうなずいた。

もしかしたら自分で気がつかないうちに、もっとブツブツ言っているのかも知れない。
オーナーは仕事の妨げになると判断したのか、その後日からインカムを着けてという指示はない.....。







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